論客商売 経営者の迷いを断つ。無害流論客 塩谷隆一

不動産所有会社の落とし穴

2013.10.01

健全に経営されていた会社が、産業構造の変化等により、事実上廃業する事があります。その場合、法人の資産(内部留保、事業用不動産)を、どうやって有効活用するかが、問題になります。法人を解散し、資産を株主で分配すると、法人税と所得税を課税されるので、三分の一程しか手元に残りません。

私が知る事業廃止のうち、約半数が法人を不動産所有会社として、存続させています。 事業用不動産を事務所、倉庫として賃貸したり、事業用地に内部留保や借入金で賃貸住宅を建設します。建物の減価償却と経費の設定によっては、法人税のかかる利益は発生しません。この方法なら、大きな課税は発生せずに、比較的リスクの低い業態に変更出来るわけです。

しかし、中長期的には問題点があることを、指摘したいと思います。  最も大きいのは、所有権の分散です。不動産の共有と同じですが、定款で株式の譲渡を制限しても、相続等で株主が分散します。特に少数株主には、配当のメリットも少なく、法人に対する愛着もないので、現金による持ち分の買取を請求されることがあります。 法人に借入金の枠があれば、自社株買いの可能性もありますが、多くの場合は困難でしょう。仮に、資金の準備があっても、対価の算定に大きな差が出るのが普通です。

見逃しがちなのは、現金収入の機会損失です。  この方法では、賃貸収益を減価償却と経費、または内部留保にしないと、法人税と所得税の二重課税になって、節税の利点がありません。つまり、収入は法人の資産になるばかりで、株主の現金収入にならないのです。もし金融資産なら、必要な時に切り売りしたり、配当で収入を得ることが出来ます。 ※個人的には、一億円の現金は、二億円の不動産と同じ位の価値と見積もっています。

将来、減価償却が終了すれば、賃貸収益は法人税を課税された後、株主に分配され所得税を支払います。それ以外にも、法人所有のメリットが、失われる可能性があるのです。税務当局が、株主などの関係者が役員報酬や給与を受け取ることを、実態労働がないとして、経費として否認することがあるのです。  そうした余録が無く、賃貸収益が減価償却や経費で消えるとすれば、今度は賃貸事業の収益性に問題があります。

以上の指摘は、不動産所有会社への転換を否定するものではありません。事業廃止は、時間との戦いでもあり、唯一可能な選択肢の場合もあります。また、解散損失の回避の他にも、法人資産の分配を容易にしたり、瑕疵担保責任の精算を回避するなど、多くの利点を持った解決策です。  ただ、何らかの出口対策が必要だと言うことです。   不動産所有会社をM&Aで売却する方法が、もっとも有効だと考えていますが、未だ 実例が少なく、可能性を検討している段階です。

Category: コラム, 塩谷研究室

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